更新日 | タイトル | カテゴリ |
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2025.09.25 | 2025年社会保険と「年金制度改革」 | 社会保険 |
2025.08.01 | 2025年税制改正と「年収の壁」 | 税制改正 |
コラム掲載日:2025年9月25日
現在、パートやアルバイトなどの「短時間労働者」が社会保険(健康保険・厚生年金)に加入するには、以下すべての条件を満たす必要があります。
① 週20時間以上働いている
② 月の給与(残業代・通勤手当などを除く)が8.8万円以上(年収換算で約106万円)
③ 2ヶ月を超えて継続して働く予定がある(臨時の労働者ではない)
④ 学生でないこと(※例外あり)
⑤ 勤務先の従業員数が51人以上であること
このように、社会保険への加入には「収入」「勤務時間」「会社の規模」など、複数の要件をすべて満たす必要があります。
2025年の年金制度改正では、この加入条件のうち
② 月収要件(いわゆる“106万円の壁”)の撤廃
⑤ 勤務先規模要件の段階的な縮小
が予定されています。
次回からは、改正内容について一つずつ解説していきます。
短時間労働者が社会保険(健康保険・厚生年金)に加入するためには、「月の給与が8.8万円以上(年収約106万円)」という条件があり、これが“106万円の壁”と呼ばれてきました。
しかし、最低賃金の上昇により、週20時間働くだけで月8.8万円を超えるケースが増え、この収入要件は形骸化しつつあります。
こうした背景をふまえ、2025年の年金制度改正では、この収入要件が撤廃される予定です。
改正の施行は、法律の公布から3年以内に、全国の最低賃金が1,016円を超えた時とされています。
今後は「週20時間以上働いているかどうか」が、社会保険加入の主な判断基準となっていく見込みです。
現在の制度では、短時間労働者が社会保険に加入するためには、勤務先の従業員数が「51人以上」であることが条件のひとつになっています。
しかしこの「企業規模要件」は、今後段階的に見直されていく予定です。
▼企業規模要件の見直しスケジュール
・現在:従業員51人以上の企業に適用
・2027年10月〜:36人以上
・2029年10月〜:21人以上
・2032年10月〜:11人以上
・2035年10月〜:企業規模の要件が完全撤廃
これにより、大企業だけでなく中小企業や小規模事業所で働くパート・アルバイトの方も、社会保険の対象となるケースが大幅に増えることになります。
これまで短時間労働者が社会保険に入るには、収入や会社の規模など複数の条件をすべて満たす必要がありました。
しかし2025年以降の制度改正により、「収入要件の撤廃」「企業規模の制限の段階的縮小」が進むことで、
今後は「週20時間以上働いているかどうか」が、社会保険加入の主な判断基準となっていきます。
この見直しは、働く人にとって分かりやすくなる一方で、事業主側にも影響があります。
中小企業や小規模事業所においても、対象者が増えることで、社会保険料の負担が大きくなる可能性があります。
社会全体で保障を広げる目的とはいえ、実務上の準備や理解が必要です。
コラム掲載日:2025年8月1日
「年収の壁」とは、収入が一定額を超えると税金や社会保険の負担が増えるラインのこと。特に「103万・106万・130万・150万」など、いくつもの“壁”が存在します。
2025年の税制改正では、所得税がかからないラインが「103万円→160万円」に実質引き上げられました。これにより、より幅広い年収でも非課税の対象になる可能性があります。
ただし、社会保険の「106万円の壁」「130万円の壁」は今回の改正対象外。税と社保では制度が異なるため、それぞれの“壁”を正しく理解することが大切です。
また、今回の改正は所得税のみで住民税は変わっていません。年収100万円を超えると住民税がかかることになります。
「年収の壁」は税金だけでなく、社会保険(健康保険・厚生年金)にも関係します。多くの人が気にするのが「106万円の壁」と「130万円の壁」です。
130万円を超えると、パートやアルバイトでも社会保険に加入が必要になることがあります。
ただし、勤務先の規模によってはそれより早く加入が必要になる場合があります。
たとえば、従業員101人以上の企業で週20時間以上働き、年収が106万円以上ある場合などが対象です(学生を除く)。
さらに、今後の年金制度改革では「106万円」という年収要件の撤廃や、従業員100人以下の企業でも同様にパート・アルバイトの方の加入範囲が広がる事が検討されています。
今年の改正で年収160万円までは所得税がかからなくなりました。ここで注意したいのが、「年収160万円までは、所得税もかからないし、家族の扶養に入れる」と勘違いしてしまう点です。
家族の扶養に入れるラインは改正前が年収103万円で、今回の改正で、このラインは「123万円」にしかなっていません。
ただし、大学生等(19歳〜23歳未満)の子は、年収が123万円を超えても、年収150万円までは親は63万円の扶養控除が使えます。
また、年収150万円を超えても控除額がすぐ0にはならず、段階的に控除額が減っていき、年収188万円を超えると0円になります。
「年収150万円を超えると、夫の税金が増える」——。この“150万円の壁”という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
この制度は、配偶者控除(配偶者の収入が103万円以下の場合)と、配偶者特別控除(103〜201万円までの収入に応じて段階的に控除)の仕組みによるものです。
2025年の改正により、所得の計算方法が変わり、年収160万円前後までであれば控除の満額(38万円)が受けられるケースが増えました。
ただし、配偶者特別控除を受けられる最大ライン(年収201万円)については、今回変更はありません。配偶者特別控除を受けられる範囲は狭くなったこととなります。
今回の税制改正で大きく見直されたのは「税金に関する壁」です。特に「103万円の壁」「150万円の壁」に該当するケースに影響があります。
基礎控除・給与所得控除が引き上げられ、本人の所得税がかからないラインは160万円まで拡大しました。
また、扶養控除の判定基準も一部緩和され、「103万円超でも扶養対象になる」ケースが広がりました。
ただし、社会保険の「106万円」「130万円」の壁には今回手が入っておらず、制度全体を正しく理解しておくことが重要です。