従業員にM&Aをどう説明すればよいですか?

コラム最終更新日:2024年7月30日

事業承継・M&AコラムM&Aに関するQ&A

M&Aが成約した際、その事実をどのタイミングで、どのようにして従業員に開示すべきかは、多くの経営者にとって大きな課題となります。M&Aの開示に関しては、タイミングを間違えると従業員や取引先に不安を与え、企業活動に悪影響を及ぼす可能性があるため、慎重な対応が求められます。ここでは、従業員にM&Aを説明する際の基本的な進め方や、注意すべきポイントについて解説します。


開示のタイミング

まず、M&Aの事実を公表するタイミングについてです。原則として、M&Aが正式に成立した後に従業員への開示を行うのがベストです。これは、事前に開示を行うことで情報漏洩のリスクが増大するだけでなく、M&Aが確定する前に公表することで、万が一成約しなかった場合に従業員や取引先に誤解や不安を与えてしまうリスクがあるためです。

また、具体的な候補先や取引条件が確定していない段階でM&Aの事実だけを公表すると、従業員にとっては不確定な情報が多く、不安を煽る結果となりかねません。従って、M&Aが正式に成立し、確実な情報を持っている段階での開示が望ましいと言えます。


開示の順番

開示の順番にも注意が必要です。まず初めに、経営者が最も重要と考える従業員、特に幹部や番頭さんがいる場合は、彼らに最初に開示することが望ましいです。その後、全従業員に対して説明を行い、最終的に取引先や関係者に公表するのが一般的です。

先に取引先や関係者にM&Aの事実を開示してしまうと、従業員が間接的にその情報を知ってしまい、不信感や混乱が生じる可能性があります。そのため、従業員への開示を最優先とし、彼らが安心できる状況を整えた上で、外部への発表に進むことが重要です。


説明の内容とポイント

M&Aの事実を従業員に説明する際には、経営者自身がなぜM&Aを選択したのか、その理由を明確に整理しておけば、おのずと話す内容も明確になるでしょう。単に「M&Aをした」「○○と資本提携をした」という説明ではなく、M&Aを選択した背景や目的を丁寧に伝えることが大切です。

例えば、企業の成長を持続させるため、または従業員の雇用を安定させるためにM&Aを選択したといった、具体的な目的を説明することで、従業員は経営者の意図を理解しやすくなります。特に、会社の未来や従業員やその家族の将来を考えた上での決断であることを説明することが重要です。


従業員との対話を大切に

M&Aが従業員に与える影響は個々に異なります。そのため、説明の場を設けるだけでなく、個別の対話や相談の機会を設けることも大切です。従業員一人ひとりの不安や疑問に丁寧に対応することで、M&Aに対する理解を深め、職場の一体感を保つことができます。

また、M&A後の統合プロセス(PMI)においても、従業員の協力が欠かせません。従業員が経営者の考えを理解し、共感を得られれば、PMIの成功にもつながります。



【コラム執筆者】

社員税理士 杉井秀伍

プロフィール:2016年4月より1年間、大手M&A仲介会社に出向、中小企業M&A業務の実務を経験する。その後税理士法人杉井総合会計にて税理士登録。日本最大のネットマッチングサイト「バトンズ」にて2020年ベストアドバイザー賞を受賞

保有資格:税理士、M&Aシニアエキスパート

支援実績等:学習塾事業・調剤薬局事業・旅客運送事業・金属加工業  等


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